5本の線と雲
一目均衡表は日本の一目山人(本名・細田悟一)が考案した指標で、チャートの上に5本の線を重ねて描きます。転換線・基準線・先行スパン1・先行スパン2・遅行スパンで、2本の先行スパンの間を塗りつぶしたものが雲です。線が多くて複雑に見えますが、材料は単純です。遅行スパンを除く4本はすべて「一定期間の最高値と最安値のちょうど真ん中」を組み合わせた値で、遅行スパンは終値を後ろにずらして描いただけです。真ん中の値を使うのは、その価格がその期間に買い手と売り手がせめぎ合った範囲の中心だからです。価格が中心より上にあれば、その期間の値幅の上半分で取引されているという意味で、下にあれば下半分にあるという意味です。そのため最初は線の名前を覚えるより、「今の価格が短い期間・中くらいの期間・長い期間の真ん中より、それぞれ上か下か」を問う道具として理解すると混乱しにくくなります。よくある思い込みは、線が多いから根拠も多いと考えることです。5本の線はすべて同じ高値・安値・終値から出た値なので、互いに独立した根拠ではありません。
転換線と基準線:期間の真ん中
転換線は直近9本の最高値と最安値を足して2で割った値で、基準線は同じ計算を26本で行った値です。移動平均線が期間内の終値をすべて平均するのに対し、これらの線は最も高い値と最も低い値の2つだけを見ます。そのため、新しい最高値・最安値が出たときや、古い極端な値が期間の外に抜けたときにしか動かず、その間は図のように平らなままです。転換線が基準線の上にあれば、直近9本の真ん中が26本の真ん中より高いという意味で、移動平均線の上昇の並び(パーフェクトオーダー)に近い読み方をします。平らな区間には使い道があります。基準線が平らだということは26本の間に値幅の端が変わっていないという意味なので、価格がその範囲の中を行き来していると読む人が多いです。注意したいのは、線が動いた理由を別に見ることです。基準線が下がったのが新しい安値のせいか、26本前の高い高値が枠の外に抜けたせいかで意味が違います。後者なら今の価格がまったく動かなくても線が下がるので、チャートで26本前の足を探して確かめる習慣が役に立ちます。
例: 基準線は直近26本の最高値と最安値の真ん中です。新しい最高値・最安値が入るか、古い値が26本の枠から抜けるときにしか動かないので、平らな区間ができます。
先行スパン:25本先にずらした値
先行スパン1は(転換線 + 基準線)÷ 2 で、先行スパン2は直近52本の最高値と最安値の真ん中です。どちらも計算した足より先にずらして描きます。よく「26日先」と言いますが、これは今の足を1本目と数える数え方なので、TradingViewとこのサイトの一目均衡表ツールは実際には25本先に描きます。26本ずらすプログラムとは雲が1本ずつずれて見えますが、線の値は同じです。「先行」という名前でも、すでに過ぎた足で計算した値なので、将来を見通した値ではありません。先にずらして描くのは、「今の中間の価格がこの先しばらく基準点の役割を果たす」という考えを図で示すためです。ですから右側の空白に描かれた雲を将来の価格の予告として読むのは、よくある思い込みです。確かめる順番はこうです。まず今の足の位置にある雲が何本前に計算された値かを思い出し、次に右側の雲が陽雲か陰雲かを見ますが、それは直近25本の流れを要約したものにすぎないと一緒に覚えておきます。異なるプログラムの雲を比べるときは、ずらす本数の設定から合わせます。
雲の位置・厚み・ねじれ
雲では3つのことを見ます。まず価格が雲の上・中・下のどこにあるかで、雲の中は方向が定まっていない局面と解釈されることが多いです。次に厚みです。2本の先行スパンの距離が離れているほど雲は厚く、厚い雲を価格が抜けにくい支持・抵抗とみる解釈があります。最後はどちらの線が上にあるかです。先行スパン1が上の雲を陽雲、先行スパン2が上の雲を陰雲といい、2本が交差して雲が入れ替わる所をねじれと呼んで、流れが変わる時点の候補として参考にします。厚い雲が持ちこたえるように見えるのは、雲が厚いということが短い期間と長い期間の中間の価格が大きく離れているという意味で、その間で以前に取引した人が多く、買値近くの注文が出やすいと考えられるからです。逆に薄い雲は簡単に抜けることが多いと言われます。ただし厚みは価格の単位なので、値動きの大きい銘柄ほどいつも厚く見えます。同じ銘柄の過去の雲と比べて相対的に判断するほうがよいでしょう。ねじれは先行スパンの計算上、すでに過ぎた価格の変化が反映された結果なので、それ自体がタイミングを教えてくれるわけではありません。
遅行スパン:終値を25本前へ
遅行スパンには計算がありません。今の足の終値を25本前、つまり今の足を1本目と数えて26本目の足の位置に描いておいた線です。そのため、遅行スパンがその位置の価格より上にあるということは、今の終値が25本前の価格より高いという意味と同じです。このサイトのツールは、今の終値と25本前の終値を比べます。線が後ろにずれているのでチャートの最後の25本の区間には遅行スパンがなく、遅行スパンが過去の価格帯にぶつかる形を支持・抵抗と解釈することもあります。結局、遅行スパンは25本のモメンタム、つまり今の価格と25本前の価格の差を目に見えるようにした仕掛けです。よくある思い込みは遅行スパンを独立した先行指標のように扱うことですが、今の終値1つをずらしたものなので、情報は終値にすべて含まれています。判断するときは、遅行スパンとその位置の足がどれだけ離れているかも見ます。ほとんど重なっていれば今の価格が25本前とほぼ同じという意味なので、次の数本の間に判定が簡単に覆ることがあります。25本前の区間が大きく揺れた場所なら、遅行スパンの条件は今の価格より過去の足のせいで変わりやすくなります。
三役好転と三役逆転
下の3つの条件がすべて上昇側にそろった状態を三役好転、すべて下落側にそろった状態を三役逆転と呼びます。このサイトの一目均衡表ツールは、最後に確定した足を基準に判定します。図では転換線と遅行スパンの条件が先にそろい、価格が雲を上抜けた足で3つがそろいました。3つの条件はどれも価格がすでに上がったあとでようやく満たされるので、三役好転は流れが一方に傾いたことの確認に近く、出発の合図とは見なしにくいものです。確かめる順番は、ふつう雲の位置、転換線と基準線の上下、遅行スパンの順に取ります。雲は最も長い期間を反映するので大きな流れの方向を先に決め、残りの2つの条件で短い流れがその方向と同じかどうかを見るやり方です。3つの条件が同じ足で同時に初めてそろうことはまれで、たいてい1つずつ順に満たされます。そのため2つだけそろった状態を「ほぼ三役好転」と先に数える人もいますが、雲を抜けられずに押し戻されることもよくあるので、まだ中立とみるほうが定義に合っています。
例: 雲の下にあった価格が上がってくるにつれて、転換線が基準線の上に、遅行スパンが25本前の価格の上に抜け、最後に雲を上抜けた足で三役好転が成立します。「現在」より右の雲は、すでに過ぎた足で計算して25本先にずらして描いたものです。
- 転換線が基準線の上
- 終値が雲の上(今の足の位置に描かれた雲の上端より高い)
- 遅行スパンが25本前の価格の上(今の終値 > 25本前の終値)
- 3つとも逆なら三役逆転、入り混じっていれば中立
9・26・52という数字
9・26・52は、土曜日も取引していた時代の週6日を基準に、1週半・1か月・2か月ほどを表す数字だと説明されます。24時間・週7日取引される暗号資産にそのまま使うと、日足の26本は1か月ではなく26日です。そのため暗号資産には期間を20・60・120に延ばし、ずらし幅を30にする設定(このサイトのツールでは実際には29本ずらす)を使おうという人もいれば、初期設定なので最も多くの人が見ているという理由で9・26・52をそのまま使う人もいます。どちらが優れているという検証された結論はないので、ツールで2つの設定を切り替えて判定が同じかどうか比べてみる程度が現実的です。期間を延ばすと線がさらに遅くなり、判定が変わりにくくなる代わりに転換が遅れて出ます。数字を選ぶときによくある失敗は、最近のチャートによく合って見える期間を選び、その設定が正しいと信じることです。過去数か月に合わせた設定が、次の数か月にも合う保証はありません。足の長さを変えても同じ効果が出ます。4時間足の26本は4日あまりなので、同じ9・26・52でも足の長さによってまったく違う期間を見ていることになります。
反応が遅いという限界
一目均衡表の線はどれも過去の高値・安値の中間値か、後ろにずらした終値なので、価格が向きを変えてからしばらくたってようやく条件が変わります。52本の中間値である先行スパン2は特に遅いです。レンジ相場では価格が雲を出入りし、転換線と基準線が頻繁に交差して判定が変わり続けます。線が多いぶん、どんな状況でももっともらしい根拠を1つくらいは見つけやすいという点にも注意が必要で、判定は足の長さごとに違って出ます。三役好転のあとに価格がどう動いたかは、この記事では測っていません。反応が遅いのは欠陥というより設計の結果です。真ん中の値を使うので小さな揺れには動きにくく、その代わり急な反転には遅れます。そのため急落の直後のように価格が短い時間で大きく動いた場面では、すべての線がまだ以前の流れを指していることがあります。こうしたときは線の判定だけを見て流れがそのままだと考えるより、判定が変わるには価格がどこまで来る必要があるかを計算してみるほうが実用的です。
暗号資産と株式で違って見える点
暗号資産は24時間休まず取引されるので足と足の間にすき間がほとんどなく、雲を抜ける過程も足に沿ってつながって見えます。株式は通常の取引時間が終わったあと夜の間にニュースがたまると、翌日の始値が大きく離れて始まる窓(ギャップ)ができ、価格が雲を1本で飛び越えることがよくあります。サムスン電子やSKハイニックスのように海外の半導体ニュースに敏感な銘柄や、決算発表が取引終了後に出る米国の大型ハイテク株で特によく見られます。窓で越えた雲はその中で取引がなかったという意味なので、雲を支持・抵抗とみる解釈が当てはまりにくいことがあります。韓国株には1日の値幅制限があって1本の動きが一定の幅に収まり、米国株には1日の値幅制限がない代わりに、急変したときに取引を一時止める仕組みがあります。期間の意味も違います。株式は週5日の取引なので日足の26本は1か月あまりで、暗号資産では26日です。同じ設定でも2つの市場で見ている暦の上の期間が違うことを覚えておきます。
リアルタイムのチャートで見るとき
リアルタイムのチャートの最後の足は、まだ確定していない足です。その足の高値・安値・終値が変わるたびに、転換線と基準線、その足で計算されて25本先に描かれる先行スパン、そして遅行スパンが一緒に動きます。進行中の足が雲の上に出たあと確定の直前に戻ると、画面で一瞬見えた三役好転は記録に残りません。このサイトの一目均衡表ツールが最後に確定した足で判定するのはこのためです。リアルタイムで見るときは進行中の足の形と確定した足の判定を分けて見て、判定が変わるにはこの足がどの価格の上か下で確定する必要があるかを先に書き留めておくと、画面が揺れても振り回されにくくなります。足が短いほど確定が頻繁に来るので、判定も頻繁に変わります。
実践の確認手順
一目均衡表を開いたら下の順番で見ると、線が多くても見落としが減ります。どの段階も判断を代わりにしてくれるものではなく、今の状態を整理するためのものです。
- 足の長さと設定(9・26・52か、ずらす本数はいくつか)を先に確かめる
- 最後に確定した足で、価格が雲の上・中・下のどこにあるかを見る
- 転換線と基準線の上下と、基準線が平らか傾いているかを見る
- 遅行スパンと25本前の価格の距離を見て、判定が覆りやすい位置かを見積もる
- 雲の厚みを同じ銘柄の過去の雲と比べる
- 判定が変わるには、この足がどの価格で確定する必要があるかを書き留める
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